鰍(いなだ)です。 4月2日に、「うまけりゃいい屋」の春の季節の会席コースで、念願だった鳥貝と本水松貝を食べることができました。 そこで、今が旬の貝の鮨を、コレクションの中から抜粋してみました。 4年間で食べたものなので、他の季節でなければ食べられないものも含んでいますが、今からお食事の予約する方の参考になればと――。 貝のネタは、上から五十音順に並べてあります。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 11月〜5月 [素材(産地)] 青柳(千葉県富津) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 柔らかめに仕事がしてあり、じゅわっと貝の旨味が口の中に広がる。 全く香りを消さない調理法になっている。 ※写真とは、別の時の蘊蓄です。 [感想] 写真は、薫りが強い時季の青柳です。 貝、美味いですねぇ……。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 12月〜3月 [素材(産地)] 赤貝(愛知県) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 産卵前の5月の赤貝。 [感想] つやつやと赤く輝く綺麗な姿です。 食感が良くて、貝独特の甘味があります。 赤貝の握り鮨は、うまけりゃいい屋で、よく出てきますが、身のみ、紐のみ、身と紐、紐の時雨煮を仕込んだもの、載せたものなど、バリーションに富んでいます。 仕入れの時期や、赤貝の個体で異なる食感や薫り、身の旨味などを考慮し、その日に、一番、美味しく食べられる状態で出てきます。 薫りの強い赤貝は、口の奥でふくよかな薫りが広がり、鼻に抜けてくるのがたまりません。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 12月〜3月 [素材(産地)] 赤貝 [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 酢飯は、春先の酢に変わっている。 これから、夏に向かって、どんどん酸っぱくなっていく。 [感想] 赤貝の紐の時雨煮が載せてあります。 赤貝に結構、薫りがあります。 口の中に、赤貝の薫りが充満し、鼻腔に抜けていきます。 柔らかい食感がいいですね。 酢飯と混ざり合うと幸せを感じます。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 12月〜3月 [素材(産地)] 赤貝 [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 赤貝の紐を三つまとめて握ってある。 この日の赤貝の弱い薫りを補うために、赤貝の紐の時雨煮が載せてあり、中にも仕込んである。 [感想] 食感がコリコリしていて、酢飯と口の中で交じり合うと、たまらない美味しさです。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 6月〜7月 [素材(産地)] 愛知県 [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 石垣貝は、甘くて、あまりクセの無い貝。 優しく口に運ぶと、舌の上に載せたときに滑らかな、ぬめぬめっとした食感が先に立つ。 でこぴんするくらいの感じで虐めると、かなり身が締まる。 これで、コリコリ感と甘味が全然変わってきて、噛んだ瞬間に甘味が広がる。 あまり激しく何度も虐めると貝も疲れて、味が落ちる。 [感想] 叩く前の石垣貝です。 こちら、叩くと、収縮反応が起きて、身が反り返ります。 その際、甘味が少し増します。 身の食感はコリコリしています。 磯の薫りが鼻の裏側から感じられ、貝の淡い甘味が舌の上にゆっくりと広がります。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 4月〜5月 [素材(産地)] 鳥貝(三重県) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 生の鳥貝。 今(4月上旬)は、甘味もしっかりとあるが、磯の薫りの方が強い味。 5月のGW明けか、4月の末にもう一回出せるが、その時は一番ど真ん中で、身が肉厚になる。 鳥貝の旬は、こんな感じなんだって思う。 [感想] 生なので、叩くと石垣貝と同じく収縮反応を起こします。 食感がシャクシャクしていて、爽やかな磯の薫りが鼻に抜けていきます。 これは、まだ奔りの鳥貝なので、身が薄いそうです。 確かに、薄いので舌にひたっと貼り付く感じがあります。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 5月〜8月 [素材(産地)] 帆立貝(北海道留萌など) [寿司ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 時期によるが、天然物は筋肉が発達しているので、あまり身に水分を含んでおらず、むちむちした食感になる。 また、むちむち感のある弾力と、帆立の味の濃さが両立するのは、旬のとある一週間くらい。 そのため、通常は、弾力と味のどちらかを取ることになる。 [感想] 5月初旬から6月中旬にかけて、三度、帆立を食べましたが、確かに、弾力と味の濃さが変わります。 産地が同じとは言えないため、一概に、大将が言う通りとは限らないかもしれませんが、6月中旬に食べた、この写真の帆立が一番、帆立の味が濃くて、好みでした。 しかし、5月に食べた帆立と比べると、確かに弾力が弱くなっていました。 食感と味、どちらを取るか――? それを考えるのも、天然帆立の醍醐味かもしれません。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 12月〜4月 [素材(産地)] 北寄貝(北海道長万部) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 日本で最高峰の大きさの北寄貝を使っている。 ムラ洗い(醤油洗い)したあと、少し焼いてある。 北寄貝は、火で炙ると甘味が増す傾向が強い。 [感想] 少し焼いてあるせいか、やや香ばしく、 貝の甘味が際立っていて、美味しいです。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 7月〜9月 [素材(産地)] 牡蠣 [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] [感想] 生牡蠣は、何度か食べましたが、煮牡蠣の鮨は、初めてでした。 苦味は全く無く、煮汁の味が染み込んでいて、美味しい……
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 7月〜9月 [素材(産地)] 岩牡蠣(京都府丹後半島) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] なかなか、夏の岩牡蠣で煮牡蠣を作る人はいない。 高級すぎて、普通は作らない。 [感想] 生の牡蠣の潮っぽいクセが抜けた淡い甘味に、煮汁の醤油の味が立っていて、シャリと混ざり合うと、何とも言えない味になります。 美味いです。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 11月〜4月 [素材(産地)] 牡蠣(広島県広島市) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] [感想] 出てくる前から既に、カウンターの奥から香ばしい薫りがしています……。 以前、食べた煮牡蠣には、海苔が使われていなかったので、新種です。 牡蠣の甘味と旨味、海苔の味が渾然一体となって、口の中で交じり合います。 海苔付きの煮牡蠣も、また、違った趣があって良いですね。 手元で焼いてあるせいか、磯辺焼きみたいな風情があります。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 2月〜3月 [素材(産地)] 蛤(和歌山県) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] ずっと噛んでいたい感じのお鮨。 噛んでいるうちに、酢飯の酢が、ふわっと出てくる。 それが尾を引いて、もっと喰いたくなる。 いくらでも喰えると思う。 [感想] 煮詰めではなく、煮切り醤油の煮蛤です。 かなり歯ごたえがあります。 噛むと、じわじわと味が出て来ます。 滲み出る味は、やや濃いめに感じられて、いつまでも口の中に広がります。 煮蛸よりも、長く噛んでいられます。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 5月〜8月 [素材(産地)] 帆立 [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] その時の帆立の状態によって、強く塩締めするときと、弱く塩締めするときがある。 帆立の表面が、ぱっと見たときに、白っぽくなっているときは、強い塩締め。 その時は、煮切りが薄い。 弱い塩締めの時には、煮切りが濃い。 だいたい季節によって、帆立が変わっていくので、奔りなのか、盛りなのか、名残なのかで少しずつ変わっていく。 基本、奔りの方は、強い塩締めにして、薄い煮切りが当たっている。 [感想] というわけで、この日は、強い塩締めで、薄い煮切りでした。 身が甘いです。 肉厚で美味しいですよ。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 5月〜8月 [素材(産地)] 帆立 [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 檸檬を二滴くらいたらしてある。 今の帆立は、これが一番、甘味を感じる。 薫りと濃厚な甘味を感じる鮨。 [感想] この帆立、甘いです、やばいです。 癖が全くありません。 帆立を焼くと、こんなに美味いのか……。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 11月〜3月 [素材(産地)] 本水松貝(愛知県) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] いわゆる水松貝って言われると、この水管の部分が出てくる。 普通は、白水松貝が使われるが、これは、本水松貝。 普通、鳥貝と水松貝は、一緒には出さない。 [感想] 鳥貝から続いて食べました。 高級貝の本水松貝の水管です。 鳥貝と比べると、潮の香りが全く無いです。 甘くて、食感も鳥貝とは、全然違います。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 11月〜3月 [素材(産地)] 本水松貝(愛知県) [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 白水松貝は、この袋が使えない。 袋が出て来ると、本水松貝を使っていることが判る。 煮切り醤油をつけてある。 この時期は、春の醤油だけど、わざと薄めに使う。 そうじゃないと、貝は塩を含んでいるので、味が塩っぱくなる。 [感想] 袋の部分は、煮切り醤油と、とても合います。 水管の部分よりも、甘味が強く感じられ、煮切り醤油と融合する感じで、かなり美味いです。 食感も、弾力が心地よいです。
[献立の分類] 握り鮨 [時季] 4月〜8月 [素材(産地)] 真螺貝 [鮨ネタの分類] 貝類 [蘊蓄] 螺貝の本物、エゾボラ貝。 部位によって形が違う。 身があって、紐があって、ワタに繋がっている。 これは、紐の部分と肉の甘い部分を合わせてある。 ぱりぱりとこりこりの食感の違いを味わう。 また、甘味が部位によって違う。 真螺貝の寿司の中で、一番価値ある一品。 [感想] 噛んでみると、確かに食感と音が違います。 混ざってしまい、流石に甘味の違いまでは判りませんでしたが、甘味が立っていて、美味しかったです。 終わりに… 現在、貝の鮨のコレクションは、17種ですが、まだ、食べていないものがありそうです。 少なくとも眼高鮑(まだかあわび)黒の鮨を食べていませんね……。 そうです、oda_susiさんが、2016年7月に食べているアレです。 私は、前菜では食べたのですが、鮨では食べてないんですよね。 今年は、出会えるのかな? そろそろ貝の産卵の時季が近付き、貝はネタとしては終わりが近付くので、貝好きの人は、うまけりゃいい屋へ駆け込まないとですね! 大井松田うまけりゃいい屋は、完全予約制となっています。 お越しの際は、事前にお店に、ご連絡ください。 |
奔り(はしり)、盛り(さかり)、名残り(なごり) それぞれの粋、それぞれの風味を堪能してください。
お料理から季節を知る、日本ならではの贅沢を感じていただければ幸いです。